始めるということ。終わるということ。

何度も何かを終わりにして、何かを始めたりした。

私だけではなく、ほとんどの人たちがそうだろう。

 

しかし、悪い状況にいる時、自分の行動や習慣や環境に真剣に悩み格闘している時は

原因となる何かを終わらせることも、改善するための何かを始めることも、臆病になってできないことが多い。

 

派遣会社に登録して、その日暮らしをしていた日々。

財布の中も他者への思いやりが多少入るはずだった心もカラカラになり、でもプライドと自己顕示欲だけはいっぱいだった。

自業自得という概念は知っていたが、実感はなかった。

実感という部分は、当事者でいる時にはわからない。わかりようがない。

抜け出せて、少し浮かれて、戻りそうになって、踏みとどまって、ゆっくり振り返れて、

まだ抜け出せていない他人を眺めた時に、そうだったんだと実感できると思う。

 

フリーターから定職につく時、自分の将来がより暗くなるような感覚になったことを覚えている。その日暮らしに心身ボロボロの状況で、固定給を定時されて定職につくことに中々納得できなかった。

新しい仕事内容。人間関係。職場。制服。出張や外出。

全てに戸惑い、苛立ち、疲れて、嫌気もさした。

元々、パソコン操作ができない上に人材派遣の仕事は軽作業という名の単純作業が多く、

他にはサービス業くらいしか経験がなかった自分は、新しい技術系の職場では空っぽに近かった。

今思うと、自己顕示欲やプライドがあったから必死に食らいつきラーニングできたのかもしれないが、人生で何度も味わいたいような経験ではなかった。

しかし、仕事の辛さと相反して生活は大きく好転した。

激しい残業の甲斐もあり、家賃や公共料金が当たり前に支払いできるようになった。

週末に、ドラッグストアで日用品をしっかり補充することができ、計画的に自炊できるようになった。収入の増加も大きな好転材料だったが、いちばん大きいのは生活のルーチンが正されたことだった。

大好きだった、というより習慣的だったギャンブルも回数と消費金額が減った。

少し貯金できるようになり、その喜びと優越感を維持したくて、出費を抑えるようになった。

 

フリーター時代最大の負の遺産、税金の滞納を消却できた時は様々な感情が湧き上がり泣いた。

カラフルに差し押さえを脅してきた封筒達、窓口で明らかに生活困窮者を見下す職員の態度、

出張先で高熱を我慢し朝から朝まで残業して獲得した給料。

暴利な延滞金を含めて過去の自業自得だが、払う時にはその数十万円が名残惜しかった。

10年以上経ったが、あの時の感情は今でもはっきり覚えている。

 

今、何かの自業自得で苦しむ人たちに。

状況を変えるには、それを終わりにして、何かある度に脳裏に過ぎるそれを始めるべきだ。

始めれば今より辛い時期があるかもしれない。つまらないかもしれない。

辛いだけで終わるかもしれない。笑われるかもしれない。謝らないといけないかもしれない。

信じてもらえないかもしれないしい、また疑われるかもしれない。

それでも、踏み出さなければ変わらないし、状況は悪化する。若さもなくなる。

上手く進めたとしても、スタートラインから走れた人たちには追いつけないかもしれない。

人ごとだから、周りは何でも適当に言うかもしれないが、自分で決めて自分で選んで自分で行動してきた結果が今なのだから、辛いだろうけど一度それを受け止めて変化させよう。

上手くいってる人を嘲笑せず、真似をしよう。自分との違いを認めて、尊敬しよう。

その人が大切にしている価値観を尊重して、認知しよう。

称えあえるような努力を、追力を、そして敬愛を持って日々を精進しよう。

 

私も最後の自業自得と戦う。残っているいくつかの悪習と立ち向かう。

勝った人たちは誇らず、奢らず、助言してくれた。

自分も誰かのためになりたい。だから、少しでも関わる人たちを大切にしようと思う。